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長崎家庭裁判所 昭和46年(家)712号 審判 1971年10月02日

主文

申立人が被保護者Aについて児童福祉法第二七条第一項第三号の措置をとることを承認する。

理由

本件記録に編綴の各資料に、家庭裁判所調査官の調査報告書を併せ検討すると、被保護者は実父B、実母C間の長男として出生したが、右父母の離婚によつて父と別れ、母がDと再婚してからは、右継父と母の間で養育されて来たところ、夫婦不和のため昭和四六年二月ごろ母が家出してしまい、爾来、継父である右Dによつて監護されているものであるが、同年五月から六月にかけて二回他人の金を窃取し、二回未遂に終つた非行が発覚し、また同年七月二九日近所の一年四カ月の幼児を共同便所の便槽に投げ込むような事件を惹起したところから、所轄の警察署長より申立人に対し児童福祉法第二五条の通告がなされるに至つたこと、そこで、申立人において必要な調査を遂げ、同法第二七条第一項第三号の養護施設入所の措置をとるのが適当との判断に達したので、所在不明の親権者である母Cに代り被保護者を監護している前記Dの意向を尋ねたところ、同人は、自己の少年院入所の経験から養護施設に入れても性格の改善は期待できない。また実母の不在中に自分が勝手に承諾することもできないとの理由で、右の措置に反対の意向を表明したこと、しかして、右Dは被保護者を幼少のころから実子以上の愛情をもつて養育して来たというが、仕事の関係で帰宅が夜遅くなり、七三歳の祖父に事実上面倒を見させており、しかも、その被保護者に対する躾は極めて厳格であつて、些細なことでも叱責し、場合によつては、被保護者に殴る蹴るの体罰を加えることがあり、そのため被保護者においても右継父に対し過度の恐怖感を抱いていることなどが認められる。

そして以上認定の事実からすれば、本件は児童福祉法第二八条第一項第二号但書に一応該当するものと判断される。ただ本件の場合、親権者である母Cが所在不明のため、申立人が同法第二七条第一項第三号の措置をとるについて、その意向を尋ねえないというにすぎず、親権者などから積極的に反対の意向が表明されているわけではないので、同法第二八条第一項の規定に照らし、果して同条項にいう家庭裁判所の承認を必要とするか疑問がないではない。しかし、このように親権者らの意向を問いえない場合、これに代つて現に監護にあたつている者の意向を聞き、その者から積極的に反対の意向が表明されたとき、右条項により家庭裁判所の承認を求めることは、申立人として望ましい措置であり、むしろ法の趣旨に添うものというべきである。

しかして前記認定の諸事情に徴すると、申立人が被保護者に対し同法第二七条第一項第三号の措置をとるのは相当と認められるので、これを承認することとし、主文のとおり審判する。

(権藤義臣)

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